グローバル研究

公文和子さんに学ぶ「キャリア」のつくり方

 2025年10月31日、本校講堂において、公文和子先生による講演が行われました。高校1学年の学年主任として講演を拝聴し、公文先生のお話の中に、本校生徒たちが目指すべき「希望のかがり火」を見たように感じました。

Guest Profile

公文 和子さん

シロアムの園代表

公文 和子さん

シロアムの園代表

和歌山県生まれ、東京育ち、北海道大学医学部出身、クリスチャンの小児科医。2000年イギリスにて熱帯小児医学を学び、東ティモール、シエラレオネ、カンボジアでの医療活動を経て、2002年JICA(国際協力機構)のエイズ専門家としてケニアに赴任。以降、ケニアに在住し、種々の仕事に関わった後、2015年ナイロビ郊外に
シロアムの園を創設。シロアムの園は、障がい児や家族に対する療育やケア、社会的・経済的な自立支援、地域社会の障がいに対する理解の促進など包括的支援事業を行っている。

シロアムの園の支援から学ぶ 公文さんの取り組み

 公文和子先生は、長年にわたりケニアで障がいのある子どもたちとその家族を支援する施設「シロアムの里」を運営されています。ケニアでは、障がいをもって育つ子どもや、その子どもを育てる保護者が大きな困難に直面しています。社会には偏見が根強く、行政による支援も十分ではありません。そのため、障がいのある子どもたちは教育の機会から取り残されてしまうことも少なくありません。そのような厳しい環境の中で、公文先生の存在は、悩み苦しむ人々にとって大きな救いとなってきました。

 神田女学園では、こうした活動を支えるために「シロアムの里」への支援を始めています。その取り組みは、公文先生や現地の方々への助けとなるだけでなく、生徒たち自身にとっても大きな学びの機会となっています。

シロアムの園

キャリアを積んでいくことの難しさ

 女子が学問を志すことが容易でなかった時代に、さまざまな困難を乗り越えて女子教育の扉を開いた初代校長・竹澤里先生の志を受け継ぐ本校において、次世代を担う品格ある女性を育てることは私たちの使命です。これから社会で活躍する生徒たちは、よりグローバル化が進み、変化が激しく、将来の予測が困難な時代を生きていくでしょう。そのような社会では、多様性を受け入れ、他者の立場や背景を理解できる共感力、人から信頼される誠実さや正直さ、そして失敗を恐れず困難に立ち向かう強さや回復力、社会に貢献しようとする志が求められます。公文先生は、ケニアという異なる社会で障がいをもつ人々に寄り添い、信頼を築き、多くの困難を乗り越えて社会に貢献されている方です。本校の生徒全員が同じ道を歩むわけではありませんが、その生き方は、生徒たちにとって一つの理想的なモデルとなるでしょう。

シロアムの園

公文さんに学ぶ 自己実現とは

 講演を通して先生が伝えてくださったメッセージは、将来の指針であると同時に、「今をどう生きるか」という問いにも答えを示していました。先生は「意味のないと思われる一つ一つの出来事の中に、道が含まれている」と語られました。これは、正に私自身が日頃生徒たちに伝えたいことです。意味のないものなど存在しません。今の自分が置かれた状況の中で、一日一日を誠実に、精一杯生きること。その積み重ねこそが自己実現への道に繋がるのだと思います。出会うすべてのものに感謝し、その中から自分の望む未来へと続く何かを見つけてほしいと願っています。

シロアムの園

使命に気づき、実現するための「歩み」

 講演の中に「一枚の花びらでいるよりも、多くの花びらが集まることで、もっと美しく輝く」という言葉がありました。今回の講演を聴いた生徒一人ひとりが花びらとなり、大きな花のように社会を照らす存在になってくれることを願っています。そして、そんな輝きを放つ生徒を一人また一人と育てていくことこそ、自分に与えられた使命だと信じて、生徒たちと日々向き合っていきたいと思います。

施設の子どもが描いた1枚の絵を重ね合わせてボタンの花に

Author / 伊守 勇治
グローバル担当(神田女学園 英語教諭)

これまでグローバル教育の開発や実践を担当。グローバルコースの担任として多くの生徒の女子キャリアの支援を行った。教育実践家として、本研究所に参加。