教育実践

神田女学園

日本人学生の韓国大学進学が急増する理由と合格するための秘訣

K-POP、K-ドラマの影響で人気沸騰!

 近年、日本の高校を卒業してそのまま韓国の大学に進学しようとする学生が年々増加しています。これは世界的な傾向となっており、特にソウル大学、高麗大学、延世大学といった名門大学(通称:SKY)への入学を目指す動きが顕著です。

 日本の高校生が韓国の大学を目指す理由について、神田女学園で韓国語の授業と大学進学指導を行っている梁先生に伺いました。


聞き手 川畑浩之(神田女学園グローバル教育研究所 ディレクター)

川畑 神田女学園では、2025年3月には延世大学に4名の合格者を出していますね。

神田女学園中学校高等学校 梁 仁順先生

 この進学ブームの最大の要因は、やはりK-POP、K-ドラマに代表される「K-コンテンツ」の影響です。

 ひとつは文化への憧れと体験: K-コンテンツに触れた若者が「韓国語を学びたい」「本場で文化を体験したい」という強い探求心を持つようになっています。
 もうひとつに、専門分野の充実: 大学側もこの流れを受け、以前よりも芸能、演劇、映画、コスメ関連の学部や専攻を増やしており、K-コンテンツに直接関わる学問を現地で学ぶ環境が整っているため、教育環境が充実しているからです。
 最近は、IT関連 や 政治・外交・国際関係の分野にも注目が集まっています。

川畑 なるほど、確かにそうですね。韓国大学入試に日本からチャレンジする場合はどういう制度がありますか?

梁仁順

 日本人留学生が韓国の大学に進学する場合、多くは外国人特別枠を利用します。

 出願は7月から準備を始め、名門大学の多くは9月第1週〜第2週に出願締切となります。そのため、日本の高校の卒業を待たずに、夏休み中に書類準備を完了させる必要があります。
 外国特別枠における選考方法は書類選考のみが一般的ですが、芸術系など一部の学部ではポートフォリオや作品提出も求められます。

川畑 基本は書類選考なのですね。韓国の大学も4月スタートですか?

梁仁順

 いえ、ちがいます。韓国の学期開始は3月2日から新学期が始まります。ちなみに高等学校は2月初旬に卒業式で、3月入学ですから、日本より約1ヶ月早いですね。

川畑 名門大学(SKY)合格に必須な条件や対策を教えてください。

梁仁順

 競争が激化する中、名門大学に合格するためには、以下の要素が必須となり、年々基準は厳しくなっています。

1. 学校の成績(評定)

最も重視されるのは、高校3年間の学校の成績です。最低4.3、できれば4.5以上(いずれも5.0満点中)の評定が求められます。

2. 高い語学力(韓国語・英語)

韓国語はTOPIK(韓国語能力試験)5級以上が必須とされています。以前は3級や4級でも合格できたケースもありましたが、現在は5級以上を目指す必要があります。
英語はTOEFLやTOEICが主流ですが、SKYの一角である延世大学は、英検の資格も特別に認めています。

3. 継続的な努力と責任感

成績や語学力だけでなく、日頃の学校生活での姿勢も重要視されます。
まずは、高校生活での欠席がないことが非常に重要です。粘り強く3年間最後までやり遂げる責任感が評価されます。
その他、ボランティア活動など、積極的な課外活動への参加実績もプラスに働きます。神田女学園では、韓国語スピーチ大会や詩の朗読大会などへの参加を推奨していて、表現力や語学力を磨くとともに、着実にキャリアを積み重ねられるように指導しています。

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川畑 書類選考が基本となると、高校3年間の取り組みが評価されるのですね。あと、語学力です。もうひとつ質問ですが、外国人向け特別枠「外国人選考」と「グローバル人材大学外国人選考」について教えてください。

梁仁順

 延世大学には、「外国人選考(一般大学)」と「グローバル人材大学外国人選考」があります。特に延世大学には、「グローバル人材大学」の「グローバル人材学部」という、外国人留学生(日本人)のための別枠が設けられています。「グローバル人材大学」の場合、大学1年生のうちは教養科目と韓国語を学び、大学2年生から専攻を決めます。

 韓国の大学は最大6校まで志願可能ですが、延世大学の場合、このグローバル人材大学と外国人選考(一般大学)をそれぞれ別枠、つまり2つとカウントするため、残り4つまで他の大学や学部を選び出願することもできます。

川畑 梁先生、本日はありがとうございました。高校の高い評定、TOPIK5級以上、そして高校3年間での高い出席率と粘り強い学習姿勢が、韓国の名門大学への合格のポイントなのですね。

Author / 梁 仁順
韓国担当(神田女学園 教諭)

神田女学園中学校高等学校 教員|韓国語教育・国際交流担当・韓国の留学サポート 大韓民国 韓国副総理兼教育部長官「表彰状」および駐日本国大韓民国大使館 東京韓国教育院「功労賞」受賞。東京韓国教育院にて文化体験授業や教育プログラムを企画・指導し、日韓の架け橋として活躍。現在は神田女学園にて韓国語教育と国際交流、留学支援に従事。

Author / 川畑 浩之
事務局(ディレクター)

多くの学校・企業との交流や知見を活かして、グローバル教育研究所の事務局として、企画・取材などを担当